AppSheetで「アプリの動作が重い…」「データの反映が遅い…」と感じていませんか?
もしかしたら、それは同期設定が原因かもしれません。
AppSheetには、アプリのパフォーマンスを劇的に改善できる様々な同期オプションが用意されています。しかし、それぞれの設定がどのような意味を持つのか、どのような場面で有効なのかを理解するのは少し難しいかもしれません。
この記事では、AppSheetの速度改善に役立つ8つの主要な設定を、
- 「サーバー・クラウドとの同期」
- 「端末・クラウド間の同期」
- 「オフライン利用」
の3つのカテゴリに分け、それぞれに最適な利用シーンと設定方法を画像付きで分かりやすく解説します。
これらの設定は「Settings」にあります。ぜひ確認して設定してみて下さい。
サーバー・クラウドとの同期 (Sync: Cloud to Cloud)
アプリの裏側、AppSheetサーバー(Cloud)とあなたのGoogle Drive(Cloud)間の通信を最適化する設定です。
データ量が多いアプリで特に効果を発揮します。

1. Server caching:更新の少ない大量データは寝かせておく→ON
これは何? 読み取り専用で、めったに更新しないテーブルのデータをAppSheetサーバーに一時的に保存(キャッシュ)する機能です。
これにより、アプリがデータを表示するたびに元のGoogle Driveにアクセスする必要がなくなり、表示速度が向上します。
- 最適なケース ✅
- 郵便番号マスタや製品カタログなど、データ量は多いが更新は月に一度程度、といったテーブル。読み取り専用テーブル。
- 不向きなケース ❌
- 日々価格が変わる商品リストなど、リアルタイム性が求められるデータ。
設定方法: [Performance]に進み、「Server caching」をオンにします。
2. Delta sync:変更があった部分だけを賢く同期→ON
これは何? 前回同期した時から変更があった行だけを再取得する賢い同期方法です。
これにより、毎回全データを読み込む必要がなくなり、同期時間が大幅に短縮されます。
- 最適なケース ✅
- 行数は多いが、一度に追加・更新されるのは一部分だけ、というテーブル。
- 不向きなケース ❌
IMPORTRANGE
やARRAYFORMULA
といった関数を多用しているシート。これらの関数は、- 一部のデータ変更でもシート全体が「変更あり」と判定されることが多く、かえって同期が遅くなることがあります。その場合はオフにしましょう。
設定方法: [Performance]に進み、「Delta sync」をオンにします。
3. Quick sync:他の人の更新をすぐにキャッチ→OFF
これは何? 他のユーザーがデータを保存した際、その変更をほぼリアルタイムで自分のアプリに反映させる機能です。
- 最適なケース ✅
- レストランの注文管理のように、複数のスタッフが同時に端末を操作し、常に最新の状況を共有する必要がある場面。
- 不向きなケース ❌
- 複雑な計算を行うVirtual Column(仮想列)や外部連携機能が多いアプリ。
- バックグラウンドで頻繁に再計算が走り、かえって表示が古くなることがあります。
- その場合はオフにして、定期的な同期に任せるのが無難です。
設定方法:[Performance]に進み、「Quick sync」のチェックを外すことでオフにできます。(デフォルトはオンです)
端末・クラウド間の同期 (Sync: App to Cloud)
ユーザーのスマートフォンやタブレット(App)と、AppSheetクラウド(Cloud)間のデータ送受信をコントロールする設定です。
利用環境や業務フローに合わせて調整します。

4. Sync on start:起動と同時に最新状態へ→OFF
これは何? アプリを開いた瞬間に、必ずデータの同期を開始する設定です。
- 最適なケース ✅
- レジ締めや在庫確認など、「作業開始前に必ず正確な数字を確認したい」業務。
- 不向きなケース ❌
- 電波の弱いモバイル回線で利用する場合。起動に時間がかかり、ストレスになることがあります。
- 現場で「すぐに起動して入力したい」というニーズが強い場合は、オフにして手動同期に切り替えるのが現実的です。
設定方法: [Performance]に進み、「Sync on start」をオフにします。
5. Delayed sync:自分のタイミングでまとめて送信→ON
これは何? ユーザーがデータを入力・変更してもすぐには送信せず、端末内に一時保存しておく機能です。
右上の同期ボタンを押したタイミングで、溜まっていた変更を一括で送信します。
- 最適なケース ✅
- 地下倉庫や建設現場など、通信が不安定な場所で連続して作業を行い、電波の良い場所に戻ってからまとめてアップロードするような使い方。
- 注意点 ⚠️
- 複数人が同じデータを編集すると、データ競合(コンフリクト)が起こりやすくなります。
- 「作業終了時には必ず同期する」といったルールを設けることが重要です。
設定方法: [Performance]に進み、「Delayed sync」をオンにします。
6. Automatic updates:手間なく、よしなに自動更新
これは何? ユーザーによるデータの変更は即時に送信しつつ、他のユーザーによる変更を約30分ごとに自動で受信・反映する機能です。
- 最適なケース ✅
- 事務所の管理者と現場の作業員が、交互に日報を更新するような場面。
- 手動で同期する手間を省き、常に最新に近い情報を共有できます。
- 通信量について 📶
- 通信量は1日あたり数MB程度増える程度なので、一般的なスマートフォンの契約プランであれば大きな負担にはなりません。
設定方法: [Performance]に進み、「Automatic updates」をオンにします。
オフライン利用 (Offline Mode)
電波が届かない環境でもアプリを快適に利用するための設定です。

7. The app can start when offline:圏外でもアプリ起動OK→ON
これは何? 電波が届かない圏外の状況でも、アプリを起動して作業を続けられるようにする設定です。キャッシュされたデータを使って画面を表示し、入力作業を行えます。
- 最適なケース ✅
- 山間部の農地巡回や、大型倉庫の屋内での検品作業など。
- 注意点 ⚠️
- 利用を開始する前の初回起動だけは、オンライン環境で行う必要があります。
設定方法: [Offline mode]に進み、「The app can start when offline」をオンにします。
8. Store content for offline use:画像やPDFもオフラインで→ON
これは何? アプリ内で使用する画像やPDFといったファイルを、すべて端末にダウンロードして保存しておく機能です。
これにより、ネット接続がない状態でもこれらのファイルを表示できます。
- 最適なケース ✅
- 工場内で、常にマニュアルのPDFを参照しながら作業するような使い方。
- 不向きなケース ❌
- 写真が大量に登録されている在庫管理アプリなど。
- キャッシュサイズが数百MBにも達し、アプリの起動時間が非常に長くなることがあります。
- 通信量を節約したい場合はオフにしておき、必要なファイルだけを都度表示・ダウンロードする方式が適しています。
設定方法:[Offline mode]に進み、「Store content for offline use」をオフにします。
まとめ
AppSheetのパフォーマンスは、これらの設定を見直すだけで劇的に改善することがあります。
ご自身のアプリのデータ特性や利用シーンをよく考慮し、最適な設定の組み合わせを見つけてみてください。
私の設定は以下です。ぜひそれぞれ試してみてください。
設定項目 | 低速回線での 推奨値 | 理由・使いどころ (低速回線想定) |
---|---|---|
Server caching | ON (読み取り専用テーブルのみ) | 大量データでも一度キャッシュすれば再取得せずに済む。更新遅延(最大5分)を許容できる郵便番号・商品マスタなどに最適。 |
Delta sync | ON | IMPORTRANGE/ARRAYFORMULA があるシートでは全行が「変更あり」と判定されて逆に通信量増。低速回線下ではフル取得の方が安定。 |
Quick sync | OFF | バックグラウンド再計算が多発し通信量とCPU負荷が増える。リアルタイム共有を厳密に求めないなら切る方が軽い。 |
Sync on start(お勧め) | OFF | 起動時に全テーブルを取得すると白画面が長い。まずキャッシュ表示 → 必要時に手動🔄を推奨。 |
Delayed sync(お勧め) | ON | 圏外・低速環境でも入力を停止せずに作業可能。電波の良い場所でまとめて送信する運用に合う。 |
Automatic updates | ON(間隔 30 min) | 手動同期忘れによるデータ古化を防ぎつつ、通信量は 1 日数 MB程度で収まる。間隔は業務に合わせて調整可。 |
The app can start when offline | OFF | 圏外でもアプリ起動・入力を保証。初回だけオンライン起動が必要。 |
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